小学生低学年の頃、学校終わると神社で遊んでた。その神社は林に囲まれてて鳥居くぐった先の、かなり長い階段登った場所にあるからいつ行っても人はいなかった。
静かな場所で、苔のついた石碑や、くたびれた木の社があって、時間が切り取られたみたいなおおらかな雰囲気が大好きだった。社に座ってボーっとしてると、さわさわ葉の擦れる音が響いて凄く落ち着いたんだよね。ある日、いつものように神社行こうとしたら階段にどんぐりが置かれてる。不思議に思いながら階段を昇って神社につくと、先客がいた。いつも座ってる社の椅子に、同じぐらいの子供がいるんだ。
見たことない子だった。遠目から見て顔色の悪い子だなぁって思った。そいつは俺に気付くと笑って、おいで、おいでって手招きしだした。俺は人見知りな性分で、どうしようかって暫く迷ったまま神社の入り口で立ち止まってたんだ、5分くらいかな。その間そいつはずーっと同じ動作でおいで、おいで、してるんだよ。表情は笑顔のまま変わらないんだけど、それがずっと見ている内に笑ってるんじゃなくて怒っている顔に見え初めて気味が悪くなった。だから、無視して帰る事にしたんだよね。階段を降りようと、きびすを返すとき、視線の端でそいつが笑顔のまま立ち上がったのが見えた。
追いかけてくるなって思った。階段を降りる途中、背後から気配がして悪寒が凄かった。すぐ後ろに、何もいわずそいつがついてきているのがわかる。振り返るのが怖くてびくびくしながら階段を降りた。一段降りる度にどんぐりを踏む音が後ろから聞こえるんだよね。全部降りきって、鳥居をくぐった時には泣きそうになった。家までついてきたらどうしようって。何歩か歩いて、恐る恐る階段を振り向いた。鳥居には、誰もいない。ホッとして階段を見上げた時にぎょっとした。神社の入り口の最上段から、青白いおっさんが俺を憎そうに睨みつけてるんだ。服をめくりあげて、そこにどんぐりを貯めたおっさんがね。走って家に帰って二度とその神社には行かなくなった。