山で出会ったお年寄りのハンター、というか猟師さんから聞いた話しです。
みなさんもウサギの足跡はどのようなものか御存知でしょう。雪上に残ったものを見た方も多いと思います。前足の跡が縦に二つ並び、その前に後足の後が横に二つ並んでいるやつです。
でも、その猟師さんが追跡した足跡は大変に奇妙なものでした。前足の跡が一つと後足の後が二つだけしかなく、しかも前後の足跡が逆についていたそうなのです。猟師さんは不気味に思いつつも何故か妙に惹き付けられてしまいそのまま追跡したそうですが、その奇妙な足跡の続きは雪原の真ん中でかき消すように途絶えてしまっていたそうです。
ウサギが追跡者をかわすために後ずさりをする事もあるそうですがそのような痕跡は全くみとめられず、まるで雪原の中に解け込んでしまったような印象を受けたと言っていました。また、連れていた犬の様子もおかしく、足跡が消えている辺りに近付くと急に怯えだして使い物にならなくなったそうです。
でも、その猟師さんは先達の方々から「山にはおかしな者がいる」と散々怖い体験を聞かされてきたそうで、俺のは大した事無いなぐらいにしか感じなかったとの事。後で先達の方々には「見なくて良かったな」と言われたそうですが。