田舎の集落で代々伝わるまじない屋

かなり長いけど、俺の後輩の地元の話。盆休みも終わり、職場の同僚(俺、同期のH、後輩のN、K)で飲んでた時、夏らしく怪談とかしてみる?って話になった。とは云え、特にネタがある訳でもなく、どこかで聞いた様な心霊話をしていたら、Kが「大して怖く無いかもですけど」と前置きして話し出した。
K「僕の実家の隣のお婆さんの話なんですけど、僕が高三の時に亡くなったんですが、亡くなる2、3週間前の深夜にいきなり奇声上げながら、家から四つん這いで飛び出して行って、村の外れの田んぼで大暴れしてたんですよ。あのときの顔はマジ、トラウマですよ。白眼で泡飛ばしながら凄い声で叫んでましたから…」

一同「………」

うん、確かにそれは怖い、怖いけどね…という沈黙の後、H「いや、それは只のボケ老人の奇行だろが」と身も蓋もないツッコミが入る。確かに聞いた限りでは、その婆さんが良くないハッスルをしただけの様にも思えた。
K「でもまぁ、そのお婆さんの家がまじない屋だったから、結構そっち系だと思いますよ」

一同ポカーン(゚□゚;)

俺「マジナイヤとか何言ってんの、この昭和生まれw」
K「え、やっぱりウチの実家、田舎過ぎですかねw」
そう言う問題でもないだろと思いながら、Kの地元について事情聴取を開始。KはE感じで酔っている為、良く喋る。

Kの地元情報を纏めると大体こんな感じ
・Kの実家はT県の40軒位の集落にあり、周囲2、3kmは民家はなく農地か山。
・集落の7割はKと同じ名字で、第二勢力が「まじない屋」の婆さんと同じTと言う名字。
・K一族は本屋(本家?デカイ家らしい)、分かれ屋(分家?)と呼ばれている。(Kは分かれ屋)
・T一族は牛屋(畜産やってる)、川屋(川の側の家)、門屋(他集落との道の入口の家)等、立地や仕事で呼ばれている。
・「まじない屋」は本当は「すえや」と呼ばれている。(末屋?Kは由来は知らないらしい。肝心な所で使えない…)

で、「すえ屋」は狐憑きみたいなヤツのお祓いやったり、地鎮祭を仕切ったりしてたらしい。(普段は農家)
俺「で、そのトラウマの婆さんの葬式とか行ったの?w」
K「それが、亡くなった時も変わってて、誰か亡くなったら普通は村中総出になるのに、『すえ屋』のお婆さんの時は葬式やらなかったんですよ。気は向かないけど、一応、線香の一つ位はあげとこうと思って、学校帰りに寄ってみたんです。そしたらお婆さんの旦那さんが居て、旦那さんから『ここからにしんさい』って庭先で止められて、そこで手合わせて帰らされました。旦那さんは『今は色々集まってるから』って言ってました。」

K「ウチの祖母は『神さんや仏さんに関わってると、死に際は大変だから、死に顔を見せたくなかったんだろう』みたいなこと言ってました。」(ちなみに仏さんは人の霊、神さんはその他八百万らしい)取り敢えず、ちょっと特殊な家柄なのは分かったが、そこまで聞いても現代っ子としては、今一イメージが掴めなかった。


俺「Kはお祓いとか実際に見たことあんの?」と聞いてみた。

K「うーん、直接は何も見たこと無いですね。僕、見えない派ですからw」

本当、要所要所で使えない…

K「でも中二のとき、多分夜8時位だったかな?オヤジが頭から血流しながら帰って来たことがあって…」

いきなり流血話!?( ̄▽ ̄;)

要約
夜8時頃、K父が頭から血流しながら帰宅、直ぐに『すえ屋行ってくる』と言って、翌朝帰宅後に病院へ行く。K父曰く、帰る途中に軽トラで『何か』を轢いたらしい。Kが車を見たら、前面の左側がベッコリ凹んで、フロントガラスもバキバキに割れていた。だが、血は全然付いてなくて、塗装が剥げてる訳でもなかった。K父曰く、『何か』は毛むくじゃらで2m位の塊みたいなヤツだったらしい。

俺「そういうヤツが出てくる言い伝えは無いの?」

K「有るかも知れないですけど、僕は何にも思い浮かびません。」

N「お祓いとかの内容は?」

K「聞いたことない。でも木彫りの御守り貰って来てた。良く見てないから、細かい事は知りません。」

俺「オヤジさんはその後、何事も無かった?」

K「胃潰瘍で出血多量になって、2回くらい死にかけてましたよ。まあ只の飲み過ぎですけどwお婆さんが言うには、『この辺の神さんは鈍感だから、ちょっとぶつかった位じゃ怒らん。それに、境をうろうろしとる様なんはそんなに恐く無い』らしいですよ。」

お開きにしようかって頃にふと聞いてみた。俺「その婆さんは亡くなった後ってどうしてんの?」

K「お婆さんが亡くなった2年後位に旦那さんも亡くなって今はT一族の別の人が住んででますよwその人達が今の『すえ屋』です。」

家を引き継ぐのは普通だと思うが、その役割も当然の如く引き継がれている様で何かゾッとした。

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