大学2年生の冬、住んでいたアパートの契約が切れるところだったので心機一転、引越しをしようと部屋探しをしていた。不動産屋へ行き希望を伝えると、駅から近くて割と綺麗なマンションを紹介された。家賃も住んでいたアパートより安かったので、すぐに部屋を見せてもらうことにした。
8階建てのパッと見綺麗なマンションで、エレベーターも着いている。そこの5階の角部屋、506号室だった。玄関を開けてもらい、不動産屋の後に付いて室内に入ると、異常に暗い。とにかく暗い。日当たりが良くないとは言え、真昼間なのに日没間際のような暗さだった。特に玄関からリビングまでの間のユニットバスや台所があるスペースが真っ暗。リビングに入ると天井が薄暗く、なぜか神棚を置くような小さなスペースがあったのだが、そこが異様なまでにドス暗くて気持ち悪かった。だが住居としては申し分ない設備と環境。霊感なんて無いので、少々気味悪くても良いかと思い、契約してしまった。
無事に引越しが終わり、新居での初日。相変わらず暗いが、電気を点ければさほど気にならない。引越しを手伝ってくれた友達と鍋をつついていたら、「何かこの部屋おかしくねーか?」と言い出した。
訳を聞くと、
・電車が近くを通っているのに異常なまでに静か
・隣人などの生活音が全く聞こえない
・部屋が暗い。特に天井の四隅が暗い
・タバコを吸った後のようにどんよりした空気(誰も吸わないのに)
確かにその通りだったが、静かなことは良いことだし、暗いのも気にし過ぎだと思っていた。空気も窓を開ければ良いし。
それから何事もなく数日が経ち、バイト帰りに寄り道をして帰宅したのが深夜になった。エレベーターで5階まで行こうとしたら『修理中』の張り紙。仕方無く階段を昇ることに。5階に着いて自分の部屋に向かい、玄関のドアを開ける。何かの違和感を感じ、すぐさま玄関の電気を点けようとスイッチを押すが、点かない。何度カチカチ押しても真っ暗なまま。ここで嫌な感じが増し怖くなったが、どうしようもないので靴を脱いでリビングまで行くことにした。真っ暗なので壁に手をついてそろそろ歩く。台所のシンクに手をついた瞬間、全身が凍り付いた。
部屋の真ん中に誰か居る。体は細く背が高い。窓から射す僅かな光でぼんやりとしたシルエットになっていて、顔や服装などの細かいパーツが見えない。部屋の中に誰かが居るという異常事態にパニックになるも、体は全く動かない。すると部屋の中の人はゆっくりとこちらへと向かって来た。ゆっくりと足を引き摺るような感じで向かって来る恐怖で、気付いた時にはドアを開け、廊下を走って逃げていた。エレベーターのボタンを押しても反応が無く、修理中だったことも忘れていた。階段を駆け下りて一階まで降りると、丁度エレベーターが1階に降りて来た。
エレベーターの扉が開く。『見てはいけない!』と思い、無我夢中でマンションの入り口まで走り、そのまま近くのコンビニまでノンストップだった。それから数日は友達の部屋を転々とし、一ヵ月後には部屋を引き払い、別のボロアパートへ引っ越した。よく聞くような話で申し訳ないのだけど、実際に体験したことでした。それから何度か部屋を借りて来ましたが、暗い部屋だけは住まないと決めています。
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A0NDEzODA
この話には、とても恐ろしい要素が含まれていますね。
「異常なまでにドス暗くて気持ち悪い」と思ったのにもかかわらず契約したのは何故か。
昼間で暗かったら生活しづらいのに「申し分無い環境」と言えるのか。
余計に電気代が掛かるし、窓開けてなきゃならない物件は、設備・環境に難有りの悪条件と言えます。
それを即決する必要性はあったのか。
入居する前から既に冷静ではなく、不用意な状態。その霊がそうさせたのなら恐ろしいですね。誰でも入居する気持ちにさせてしまうなんて。