井戸の底にあるモノ

8年ぐらい前の話。根気のある人が調べれば、地方新聞に掲載された記事を見つけることが出来るかもしれない。




爺さんの家には井戸があってね。もう枯れて久しく、孫(オレや妹の事だ)が遊びにくるから危ないって言うんで潰すことにしたそうなんだよ。地元の小さな土木会社に頼んで、さっそく仕事に取り掛かってもらった。中に人が入って深さとか計測したりしたけど、特に変わった事とかはなかったそうだ。(※札があったり古い祠があったりといったオカルト的な事)だけど、作業中に道具を井戸に落とした人が「取ってくる」と降りて行ったっきり戻ってこない。ライトを照らして中を覗き込むけど誰もいない。落とした道具だけが底にある。

仕事仲間は、中に降りていくところは目撃してるけど、出てくる所は誰も見ていない。「仕事中に抜け出したか、あの野郎」と責任者の人が、相当怒ったらしい。だけど、その人は結局そのまま姿を消したままだった。家に戻った様子もなかったそうだ。

警察も事情を聞きに来たけど、失踪という事で処理されたとか。姿を消すような理由なんて特になかったはずなんで、みんな「神隠しだ」とビビリまくり。会社の人や、ばあちゃんは「潰しちゃいけない井戸だったんじゃあ」と中止を検討。だけど、じいちゃんは大反対。「孫が落ちたら危ないから潰そうとしてるのに、余計に危ない物を残してどうする!」と一喝して工事を続行させたそうだ。

その後は何事もなく井戸を潰し終わり、庭は整地された。じいちゃんがなくなってからは、その家には両親と妹が移り住んでる。生前のじいちゃんは、オレや妹に「俺はお前らを守ったんだぞ!」と誇らしげに語ってた。でもね、じいちゃん・・・母さんと妹が面倒見てる猫や犬は、何があっても庭にだけは近付かないんだ。一体何を埋めちゃったんだよ。

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