【登山の不思議な話】救助を呼ぶ約束

3年前、先輩二人と山に登ったときの話です。A先輩は山に慣れていましたが、B先輩と私はまだ初心者でした。最初は順調に登っていったのですが、途中で雨が降りだしました。やむ気配がないようだったので、一度、中腹の無線小屋に戻ることにしました。ところが、その下り道で地すべりが起き、しかも私が脚を傷めてしまい、足止めを余儀なくされたのです。A先輩は一人で無線小屋へ行き、助けを呼んで来ると言い、慎重に山を下り始めました。その日はA先輩は戻りませんでした。

夜が明けると救助のヘリが見え、私とB先輩は無事に救助されました。A先輩から3時間ほど前に救助の要請があったとの話でした。しかし、そのヘリにはA先輩の姿はありません。自分はそのまま病院に行き、A先輩のことはB先輩に任せることになったのですが、次の日に見舞いにきたB先輩は私にこう言いました。「Aの奴、あの地すべりを越えた辺りで死んだんだってよ、野犬かなんかに襲われたって話だよ」でもA先輩が死んだとされる時間は私たちと別れた直後。救助を呼ぶ無線は助けられた3時間前のはず・・・では誰が救助の要請を?私たちが避難していた場所をA先輩以外の誰かが知ってるはずもない・・・それに無線の主はA先輩の姓名を名乗ったらしい。私はきっと先輩が助けてくれたのだと信じています。「必ず救助を呼んでくるから、俺を信じてここを動くなよ!」別れる前に、先輩はそう約束していったのですから・・・

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