もう20年前のお話です。当時働いていた会社で信州に新しく支店を作るという事で応援に行くことになりました。期間は2週間ほどでその間は支店に近いホテルに滞在する事になりました。そのホテルは全国にある有名なシティホテルでしたので何の不安もありませんでした。そしてホテルは出来て間もなく外観内観もとても綺麗なホテルでした。応援に行った時はまだ秋でしたがさすが信州。既に底冷えする寒さです。到着は夜。既に食事は済ませていたのでチェックインをしてすぐ眠りにつきました。そしてその夜金縛りにあいました。
特に何を見たなどありませんでしたが、怖さを感じ部屋を変えなければ毎日同じ状況だと感じました。フロントに言うと快く部屋を変えてくれました。部屋に忘れ物が無いかもう一度部屋に行った時、何となく外が気になりカーテンを開けると、真下はズラーっと墓石がありました。そう、お墓だったんです。古い塔婆たちがなんとも不気味さを醸し出しており、こういう事だったのかと納得した覚えがあります。
そして新しいお部屋に移ったその夜は何事も無くホッとし支店へ仕事をしに行きました。その夜、部屋に戻るとテーブルの上に灰皿があったのですがその中に1本のお線香の燃えた後が残っていました。フロントの人がやったのだろう。とその時は何の不思議も思わず放置していました。そしてベットに入り寝たか寝てないかという時、部屋のドアがガチャガチャと鍵を開ける音がしました。鍵を持っているという事はフロントの人。と寝ぼけながらも咄嗟に判断し、フロント?と思いました。そしてギーッとドアが開き廊下の灯りが部屋にスーッと入ってきます。
どうして入ってくるの?と思った矢先、酷く重い金縛りに掛かりました。絨毯を革靴で歩く音が聞こえ私の枕もとを過ぎた所で止まりました。見ると制服でありがちな黄色いような黄緑色っぽいようなスラックスを履いており靴はやはり革靴です。男性だとすぐにわかりました。彼の足もとから上は怖くて見る事が出来ず、ただ彼もじっと後ろ向きでそこに立ったまま動きません。10秒くらいでしょうか、しばらくするとスーッと消えていきました。疲れと眠さの方が勝ちそのまま寝てしまいました。
朝、フロントの人に聞いてみました。「部屋をクリーニングした後、灰皿にお線香を焚いてそのままにして置くことはありますか?」と。すると、「いえ、そのような事はございません。」とおっしゃられました。ここでまた部屋を変えたい、、とも思いましたがこのホテルはどの部屋も何かしらあるのだな。と思い口を閉じました。その後も支店の応援を終えるまで数度の金縛り等ありましたがそれ以上何もないので我慢しました。実はそのお墓隣接ホテル。まだあるんですよ。