いまから15年くらい前の夏の夜の話です。
母とわたしは交代で、深夜に老犬であるヨークシャーテリアの散歩をさせていたりしたときのことです。いまも母はその恐怖について、時々思い出して話しています。
その日は工場のそばにある、車庫があったりするところを犬を連れて散歩させていたそうです。深夜12時くらいの、遅い時間のときです。
すると母の目の前に、直径1メートルくらいの大きな黒い玉がふわふわと浮いて出てきたそうです。
母だけが見たのではなくて犬も見えていたようで、その黒い玉に向かって愛犬が「ワン」と一声吠えたんです。
そしたらその黒い玉は倉庫の壁に向かって、その後天に上るようにサーっと飛んで逃げて行ったそうです。
そしてぱっと消えたのだとか。
母は目の前に起きたわけのわからない黒い大きい玉に驚いて、恐怖で急いで家に入って来ました。
「いま、黒い玉が目の前にきたー」
と興奮して話をし、恐怖に怯えた顔でした。
その時私は「なに?それって、まるで妖怪でもみたん?」と半信半疑でした。
次の日、もしかして?と気がついたわたしは、息子が持ってた水木しげるさんの妖怪図鑑を開いて、その黒い玉らしいものを探そうとしてみたのです。そしたらやはり、どこかで観たことあると思っていた私の勘が当たりました。
その図鑑には
真夏の夜に出る妖怪・黒玉
「その黒玉は人が寝てる深夜になると出てきて、人の命を取ることもある。」と書いてありました。
妖怪なんているはずがないとは思いますが、もしその場に犬が居なかったら、わたしの母親はこの世には居なかったかも?と思ってしまいます。
昔は妖怪と人間が共存できる綺麗な空気や自然もたくさんあったという話を聞きますが、まだわたしの住むところは自然が多い田舎なので、妖怪も棲める美しいところかも知れません。ちょっと複雑な気持ちにもなった出来事でした。
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最後はいい話やった。いつか人間と妖怪が共存できる日が来るといいね