夕暮れ時に山を下っていると、山道の真ん中に女が一人佇んでいるのが見えた。こちらに背を向けてうなだれている。 暗くなりかけているので、声を掛けたものかどうか戸惑いながら近づいた。寄ってみると、女がうなだれている訳ではないことに気付いた。首から上が無いのだ。
本来首の付け根がある辺りには、黒髪の束と、その真ん中から何かの芽が一本生えている。不気味だったが、引き返すわけにもいかず、できるだけ女の方を見ないようにして、道端を足早に通り過ぎた。
翌朝同じ道を登ると、昨日女の立っていたあたりに大きな木が生えていた。何かと邪魔になるが、気味が悪くて未だに切り倒せないのだという。