父から聞いた曾祖父の話。夕刻、川土手を歩いていたら、ふらふらとおかしな歩き方をする男がいたそうだ。あまりにも足取りがおぼつかないので川に落ちないかと心配していたら、案の定ドボンと転落してしまった。こりゃいかんと急いで駆けつけたのだが、おかしなことに川の中には誰もいない。首をかしげながらもその日は家に帰って寝てしまった。
数日後、土手を歩いていたらまた同じように千鳥足で歩く男を見つけた。今度こそ正体を見極めようと、足下に落ちていた石を男に向かって投げつけた。すると男は泥人形のようにバラバラになって川に落ちていった。
一体あれは何だったのか、と村の年寄りに聞くと、「そりゃおめぇ、カワウソに化かされたんだ。」と笑われたそうだ。