叔母が登山中に経験した話。叔母が仲間と険しい山を登っていると、いつの間にかルートを間違えて迷ってしまったらしい。皆で元のルートを探しているうちに一人が足を滑らせて転倒し、不自然に転がっていって視界から消えた。なんと崖へ落ちたそうだ。(崖は突然現れたように見えたらしい)ところが仲間は運よく5~6m下の大きな岩の上に乗っており、大怪我はしたようだが命に別条はなく、うずくまりながらも「大丈夫だー」と手を振る余裕を見せたそうだ。しかし、崖をのぞきこんでいた叔母も急にバランスを崩して滑落。先に落ちた仲間の側に落ちてしまった。頭を強く打ち、朦朧としていると遠くから声が聞こえてきたという。「うまそうじゃ、うまそうじゃ」嬉しそうな子供の声。しかし、その声は叔母に近づくと絞りだすような苦々しい声で「なんとまずそうな……」と言ったらしい。
結局、先に落ちた仲間は足の骨折だけだったのに何故か亡くなり、叔母は顔と腕と肋骨の骨折で助かった。叔母は「まずそう」と言われたのが今でも許せないと怒っていた。それで助かったんだから喜べばいいのに…。
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微妙な女心