新生活が始まった。生まれも育ちも九州の田舎のほう。そんな僕が上京してはじめて住んだのは、都心から電車で30分くらいのところにある賃貸のアパートだった。僕が住んだ部屋は104号室。僕のほかに101号室には家族3人が暮らしていて、すれ違うとよく挨拶をしてくれた。102号室にはおばあさんが一人暮らしをしていて、103号室にはとても美人なお姉さんが住んでいた。僕は毎朝会うのが楽しみだった。とにかくアパートの住人はいい人ばかりだった。ひとりを除いて。
105号室の住人は引きこもっているのか姿を見せない。しかし、夜になると105号室から壁を「どんどん」と叩いているような音が聞こえてくる。最初こそは無視して生活していた僕だが、しばらくして耐えられなくなった。
「どんどん・・・どんどん・・・」
僕は怒って壁を叩き返した、「どんどん!」
すると、「どんどん!どんどん!どんどん!」すごい勢いで壁を叩き返してきた。本当に頭にきた僕は、「何か言いたいなら、直接出てきて話せよ!いいかげんにしろ!!」と大声を出してしまった。すると壁の音はピタッとやんだ。と思った瞬間。
どんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどん
怖くなった僕はその日はコンビニで一夜を明かし、朝方アパートに戻ってきた。文句を言ってやろうと105号室のチャイムを鳴らしたが、出てこない。試しにドアノブをひねると鍵はかかっていなかった。ドアをあけるとそこには、、誰も住んでいなかった・・・。
驚いた僕はすぐ不動産屋に電話して、ことの顛末を話した。すると不動産屋は言った。
「おかしいなあ、あなたのアパートのその階にはあなた以外、誰も住んでないんですけどねえ・・・」