うちのばあちゃん(三年前に他界)は動物と霊に好かれるタイプだった。そのばあちゃんが若かった頃の話。ばあちゃんは1匹の縞猫を飼っていたんだが、ある時、卓上の魚を捕ろうとしてばあちゃんに払いのけられた拍子に、鼻を台の角でぶつけてしまったらしい。その後、猫の体調が悪くなり、何も食べなくなって寝込んでしまった。
田舎だったから動物病院なんてまわりに無かった時代だ。(おそらく県外に出なければ無かったんだと思う。)猫なんか放っておけという人もいたらしい。けどばあちゃんは自分のせいだからと、当時にしては高価な活きのいい魚を買ってきて食べさせようとしたりして看病し続けた。
結局、猫は死んじゃったんだが、その夜、朝になったら埋葬しようと外に猫の死骸を出しておいたそうだが、寝ていると、外で猫の鳴き声がする。「まだ生きていたか」と外に出ても生きている猫の姿は無い。そんなことが三度続いて、ばあちゃんは急に怖くなった。きっと自分を恨んで猫が化けて出たと思ったらしい。猫にいっしょうけんめい詫びたそうだ。
その後、しばらくして近所の拝み屋さんのところで交霊会があり参加していると、霊媒役の人にばあちゃんちの猫の霊が降りてきたそうだ。ばあちゃんが猫に詫びると、猫の霊が「あれは事故だったし、自分は大切にしてもらったから、ばあちゃんを恨んではいない。自分は寿命が来ていた。ただ魚と赤飯を食べられなかったのが残念だ。」と言った。ばあちゃん、慌てて近所の餅屋に走って、赤飯と魚を買ってきて猫に供えた。猫の霊が降りてきたとされる霊媒の人は、猫が食べるように皿からガツガツと赤飯と魚を食べて、顔を洗う仕草をしたそうだ。 その時、ばあちゃんがどこかへ生まれ変わるのか?と聞いたら、猫は「次は三毛猫に生まれることになっている。それが終わったら、一段高いところへ上がるから、二度と猫に生まれ変わることはない。」と告げて消えていったそうだ。
うちのばあちゃんは、知らないうちに頭にタヌキの霊を乗っけて歩くような人だったのでこういった話はよく聞かされていた。だから、やっぱり猫も修業のために生まれ変わるんだとなんとなく信じている。