死ぬほど怖いかどうかはともかく、俺の体験した怖い話を語らせてくれ。昔、川原でバーベキューでもしようぜって話が出て、友人達四人で日帰りでバーベキューしに行くことになったんだ。車の運転は俺が担当して、助手席と後部座席に二人が座って、残りの一人は最近買ったバイクで行くっていう話だった。そんで当日、俺達は四人集まって近場のバーベキュー場に向かった。目的のバーベキュー場に向かうには、トンネルをくぐる必要があったんだ。トンネルといっても普通に車は通るし、怪奇現象の類が起きたなんて噂は聞いたこともない普通のトンネルだ。だが、そのトンネルで小さな怪奇現象が起きた。
俺の車の前をバイクで走っていた友人が一瞬で消えた。は?ってなって前方をキョロキョロ見渡すが、どこにもいない。寝ぼけてたとかじゃなくて、明らかに一瞬で消えた。助手席の友人も少し身を乗り出して「あいつ消えた?」とキョロキョロしながら直球で言った。ただ、すぐに友人は見つかった。俺達の車の後方を走っていた。怖い話でよく見る、重い空気とか、変な雰囲気とか、そういうのはいっさいなかった。単純に変な現象が起きた。
バーベキュー場についたあと、友人はいつの間に俺を追い抜かしたんだ?と言っていたので、俺と友人がお前が消えたんだろ、と突っ込みながらトンネルで起きた事件を説明をしたが、バイクの友人はけげんな顔をするだけだった。ちなみに、後部座席に座っていた友人は目的地に着くまで寝ていたから、俺達の話を理解していない。
バイクの友人はいつの間にか追い越されたと思っているだけだが、俺達からすれば、友人がバイクと共に消えたのを目撃した上に、いつの間にか追い越していたという話だった。とまぁ、ここまでなら少し不思議な話で終わったんだが、一週間ぐらいたった後、そのバイクに乗っていた友人が死んだ。バイクで衝突事故を起こして死んだ。
死んだのと怪奇現象が関係しているのかどうかは分からないし、ぶっちゃけあんま怖い話じゃないが、今でも助手席の友人とあれはなんだったんだろうなと、いくら考えても答えは分からないのに、ボケたように繰り返すときがある。