ブラウン管に明らかにおかしな「顔」が映っていた

中学3年のときだ。元々住んでいたアパートが取り壊されるため立ち退きになることになった。仕方なく、オレ以上に霊感を持つ親がアパートを探していた。いい場所が見つかったらしく、みんなで一緒に見に行くことになった。入った瞬間、オレは「うわ、なんかやべぇなぁ」と、直感的に思ったんだ。しかし親は気に入ったらしい。子供が歯向かうことも許されず強制的に決定。そこへ引っ越すことになった。

オレの予想が当たったらしく、ラップ音がよくなる家だった。霊感が鋭いくせに怖がりな親どもは家中の電気をつけっぱなしで寝る。それでもラップ音はやむわけもなく、なり続けていた。すぐまた引っ越すわけにもいかなくて、しぶしぶそこに住んでいた。それから数ヶ月後、中学を卒業した俺は高校の入学式までの間、夕方に起きて朝方に寝るという生活をしていた。夕方に起きて、飯を食い、ゲームにひたすら没頭。こうやって生活をしていると気づけば夜中になっているもんだ。両親は眠りにつき、オレの部屋以外は真っ暗だ。オレはトイレに行きたくなった。部屋を出るとすぐに居間で、部屋の目の前にテレビが置かれていた。部屋を開けると部屋からこぼれる光が、テレビのブラウン管に反射するだろ?それを何の気なしに見たオレは凍りついた。

ブラウン管に明らかにおかしい顔が映っている。もちろんテレビなんかついちゃいない。オレの後ろに誰かが立っているとかではなく、ブラウン管いっぱいに顔が映っている。もし、そこに人がいるなら顔をブラウン管に押し付けている状態だ。おれは凍りついたままブラウン管を凝視した。よく見ればそれは女のようだった。ほんの数秒オレは、ブラウン管から眼をそむけた。再びブラウン管に眼を戻すと、そこにはもうなにも映ってはいなかった。これはおそらく気のせいだろうと思い込みそのままトイレへ向かった。でもこれで終わりじゃなかった。

トイレへ行くには一旦玄関へ出なければいけない。そして玄関の扉の上にはガラスでできた欄間のような部分がある。つまり外の景色がガラス越しに見えるってわけだ。オレは背がデカイためそこと顔が対面することになる。ガラスってのは向こうが暗いと、明るい方を鏡のように反射する。玄関の明かりをつけると、オレの顔がそこに写るわけだ。それを必ずオレは眼に入れなければならない。いつもどおりそれを見つつトイレに入ろうとした。しかし、何かおかしい…明らかにもうひとつ顔があった。

明らかに確認できる大きさで、先ほどブラウン管に映っていた女の顔が写った。しかも、オレの顔の前に。その瞬間全身に鳥肌が立ち、オレは狭い家の中を走って自分の部屋に戻り、扉を閉め鍵をかけた。
それから親が目覚めるまで部屋の中でひたすら、イヤホンをつけてゲームをしていた。朝になって親が起きてきて、ようやくトイレに行くことができた。よくチビらなかったと思う。

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