解体屋が始めた商売『人形、供養します』

昔の話だけど。洒落にならない系。
近所の所謂『解体屋』が、怪しげな商売を始めた。曰く、「人形供養します」。神社仏閣に関わりなんて無いくせに、適当な寺の名前を語って、人形を引き受けて供養してもらうと客を募っていた。時代的にゴミの分別が言われ始めていた時期で、本職もあまり人形を引き受けたがらなくなった頃の事、ソコソコ繁盛していたようだ。解体屋のヤードの隅には、雨ざらしでねずみ色に変色した人形やぬいぐるみがこんもり山を作っていて、かなり不気味な光景だった。供養するなんて言いつつ、結局は他の廃材と一緒に砕いて埋め立ててしまわれた人形は、たぶんトン単位だったと思う。

そんな解体屋に異変が起きたのは、供養を始めてから一年ほど経ってから。最初に、社長の孫が水死。まだ幼い孫は、解体屋ヤードに設置したビニールのベビープールの中で溺れていたそうだ。その後、解体屋娘(孫の母)が精神的に不安定になり、人形の山に自ら埋まる事が度々あった。それから堰を切ったかのように、解体屋を取り巻く人の子供や若い人ばかりに不幸が多発。解体屋からはどんどん人が辞めてゆき、わずかに残った社員は社長に御祓いを受けるように必死に頼み込んだそうだ。実際、神主さんから坊さんから怪しげなおばさん祈祷師まで、解体屋に出入りしていた。

それでも不幸はおさまらなかったらしい。でもふしぎな事に、社長には一切危害は無い。代わりにその周りにだけ。社員の実子から親戚、知り合いと、どんどん範囲が広がっていき、最終的に社長が専務と共に自ら命を絶つまで、不幸の連鎖は続いていたらしい。実際のところ、社長の死後、解体屋は『解体』してしまったので、本当に不幸が収まっているかは分からない。けど、いまだ回復しない社長の娘さんの精神状態をみていると、まだ続いているような気がする…。

専務はただの雇われだったけど、たぶん供養の発案者じゃないかなぁ。あんまりいい噂がない会社だったから、別件で何かやらかした可能性はあるけど、ご近所は全会一致で「人形のせい」になってて、一時子供たちに人形やぬいぐるみを買い与えるのがタブーになってた。

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