龍王山の怪

ざっと14年くらい前の話。
俺は奈良の天理市ってところに住んでたんだけどさ、当時5歳の俺は保育所に通ってたんだわ。
んで保育所の遠足で、天理市と桜井市の境目にある龍王山って所に行ったのよ。
この龍王山ってのが、奈良のハイキングガイドブックに載るくらいの山でさ、標高も590m位だし、道も穏やかだし、更に城跡まであるってところだったんよ。




ここから昔話になるけど、その城ってのが十市氏っていう豪族が建てた城なんだ。
まあそれなりに凄い城らしかったんだけど、戦国時代になって松永久秀に攻め滅ぼされて、城主や兵士が燃え盛る城と一緒に恨みを飲みながら焼け死んだって史実があるんだ。

それから山の周りの村々で怪奇現象が起こるようになったらしい。
山頂から火の玉が下ってきて人々を焼き殺すっていう事件が多発して、武士やら力士が退治しようとしたんだけど、武士は結局焼け死んで、刀を振り回してるうちに近くの石地蔵の首を切り落としたらしい。
力士は山に登ったきりで、村人たちが見に行くと蜘蛛の巣でがんじがらめにされて死んでたらしい。
村の人々は『じゃんじゃん火』って言って恐れたらしい。
今でも武士が切った地蔵が史跡として残ってるっていうような場所なんだ。

それで山登りが始まったんだが、どうも友達の様子がおかしい。
ずっと周りをキョロキョロしてて落ち着きがなかった。
まあ不思議に思いながらも山頂近くの城跡まで行って、そこから自由行動だったんで友達と遊んでたんだわ。
遊び始めてちょっとしたら、何人かの友達が気分が悪いって言って休みだしたんだ。
結局、2時か3時くらいで切り上げて帰ることになったんだけど、初めにキョロキョロしてた友達が行方不明になってた。
皆で探してたら、近くの森の中にポツンと立ってたらしい。

みんな怖がって、急いで下山しようって話になった。
んで、下山するときにふと城跡の方を見たら、黒い人影が20~30体くらいこっちを見てたんだわ。
ちなみにその日は平日だったんで、俺たちの保育所連中以外は誰も居なかったんだよね。
キョロキョロしてた友達の話では、山に入った時から怖い人たちがこっちをじっと見つめていたらしい。
森の中に居た友達は、遊んでたら気がついたら森の中にいたらしい。

これが俺の体験。
ちなみに家に帰ったあと原因不明の高熱で倒れて、3日ほど寝込んだんだわ。

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