某湖県ではその昔、貧困に喘ぐ村があった。
その頃は京でまことしやかに物の怪の存在が語られてて、それを高名ななんとかさんが退治したりとそんな頃。
実は京を追われた物の怪がその村の地方に逃げ込み、それが原因で村にはよく災いが起きていて、村はどんどん追いつめられていったそうな。
ある時、物の怪討伐にも参加したことのある年老いた僧がその村を訪れた。
僧はその村の惨状をみて、一目でよくないものの気配を察知する。
村人達はその僧に救いをもとめるが、僧にはそれを祓う力も残ってない。
そこで僧は、ある忌避されてしかるべき術を村人に教える。
それは厄災を払う神様を作る方法。
正確に言うと、神様に似て異なる何か。
作り方は、もう呪物そのもの。
いくつかの呪術を組み合わせて作るという、お粗末というかそんなアホなとも言えるような方法。
具体的に言うと、蠱毒と犬神の作り方に、他のものも取り入れごちゃ混ぜにしたような物。
本来ならそんな危なっかしい物は作らない。
けど村はそこまで追いつめられていたし、何より村人にそれがそんな危なっかしい物という知識はない。
すがれるものならなんでもすがろう、と言うことで実際に作ってしまう。
蠱毒を作るような方法で生き残ったある獣を何匹も集めて、煮つめるようにまた…
そうして何度も繰り返した末に残った一匹を、犬神のような手段で殺す。
そこから、その獣が骨になるまで地中に埋め、骨になったら掘り出して、その骨である楽器を作る。それが、忌み笛。
その笛のおかげで村からは災いが去り、物の怪もどこかに姿を消して、めでたしめでたし。
…とはならず、新たな問題が起こる。
その笛は確かに災いを祓ったが、その祓い方に問題があった。
単純に笛の力で祓うのではなく、向かってくる厄災に対して笛に蓄積されていた呪いやら怨みなどをぶつけてはじく、そんな方法だったらしい。
当然、そんな邪法のような作り方で作られたものだから、込められているものは半端ない。
けど、吹いている限りは村に災いが起こることもない。
そして、村人達は笛を吹き続けることを選んだんだけど、何故か周囲の村や町に災いが起こる。
そう、周囲に祓うべき厄災がないから、ぶつけるべき対象のない笛の呪いが周囲に飛び火していたのだ。
それから時代は下って、少しずつ村も豊になり、笛を吹き続けなくても災いに対抗できるくらいの地力もできた。
そうして笛は役目を終えて、その後藩主?の手に渡り事なきを得る。
ただこの話、数パターンあって、
えらい坊さんに貰った笛で魔を祓うみたいなのもあって、一応笛と災いと最後はえらいひとの所へ、というのは共通してる。
自分が聞いたのは、なかなかに怪談っぽく脚色された話だったのでは、と。
京から逃げてきたのが北へ逃げる途中の玉藻前だとか、年老いた僧も実は物の怪で…って話もある。
因みに、当方は書いてあるとおり某湖県の田舎です。