小学校1,2年頃の本当の話。
当時はコロコロコミック全盛期で、今のジャンプ映画みたいに、コロコロコミックの映画が沢山やっていた。
(高橋名人とか、毛利名人のスターソルジャー対決なんてのもあったなぁ)
その人気を反映し、夏休みにもなると、数ヶ月遅れで街の公民館にてアニメ上映会がよくあった。
その夏は確かドラハッパちゃんだった。ドラえもん、ハットリくん、パーマンの夢の競演だ。
当時コロコロ派だったので、見逃すことは許されることではなく、
中学生の姉に頼み込んで、連れて行ってもらうことにした。
公民館は3階建ての屋上付き。その3階の大会場で上映される。
早い時間から行き、一番前の席に陣取った。(近い方がお得だとその時は思っていた)
映画は3部構成なので、途中2回の休憩が入る。
一本目を見終わり、最初の休憩。
閉め切った会場は蒸し風呂のように暑く、売店でジュースが飛ぶように売れる。
姉がジュースを買ってきてくれたので、飲みながら周りを見ていた。
ふと後ろの方をみると、屋上にあがる階段が見える。
その階段を何人かが上がっていくのが見えた。
上に何があるんだろう、そう思っていると次の映画が始まり、映画に夢中になっていった。
2回目の休憩時間。
後ろの方を見るとまた階段を上っていく人が見える。
『僕も行きたい!!』
そう思って、駆け足で階段の方へ行った。
よくよく階段を上っている人達を見ると、7,8人の虚無僧の様な帽子をかぶったお坊さんだった。
その人達の後に付いていき、階段を上っていくことにした。
階段は20段ほど上ると踊り場になっており、折り返してさらに10段ほどの階段がある。
その先には屋上へ続く鉄の扉があり、虚無僧達はその扉から外へ出て行ってしまった。
僕も後を追い、その扉を開けた。
扉の先にあったのは、広々とした屋上だった。
しかし誰もいなかった。
本当に誰もいない、広々とした屋上だった。
「なぁーんだ、つまんない」
そう思い、引き返すために鉄の扉を開けようとドアノブを回す。
しかし扉は開かなかった。
鍵を掛けられたかのようにびくともしない。
「どうしよう、映画が始まっちゃう」
次の映画はドラハッパちゃん総出演、まさにこれを見ようと思って来ていたのだから堪らない。
その時キュピーンと閃いた。
そこの柵から飛び降りれば戻れる。
3階建ての屋上から、地上の駐車場へのダイブ。
ナイスなアイディアだと思った。
これしか無いと思った。飛べると思った。
そして柵によじ登り、遙か下に広がる駐車場に、意を決して飛ぼうとした。
その時、バンと鉄の扉が開き、姉が飛び込んできた。
「あんた!なにやってんの!!」
姉の怒鳴る声が聞こえた。
ハッと我に戻った。
凄く怖かった。
だってよく見ると結構高いんですよ。そこから飛び降りたら死ねます。
飛び降りる瞬間、いつまでも戻って来ない自分を姉が探していたのだ。
姉に柵の上から下ろしてもらい、手を繋いで階段を下りていった。
その時、多分俺泣いていたと思う。
飛び降りようとした事よりも、階段を下りている時が凄く怖かったからだ。
だって、階段2段おき位の両端にずらーっとものすごく怖い顔で人がしゃがんで、こっちを睨付けていたからだ。
あんまりこちらを見ているので、姉の知り合いだと思い、
「この人達って、おねーちゃんの友達なの?」って姉に聞いたんだ。
でも姉は「えっ?誰もいないじゃない」って・・・。
結局、すでに第3部は終わっており、ドラハッパちゃんを観ることは出来なかった。