妖怪・怪異・八百万の神々

ニヤニヤ笑う人面獣

知り合いの話。

彼の親族が、所有している山で奇妙な獣を見たらしい。身体は野良犬であったが、その顔が人間のものだったというのだ。ニヤニヤと笑う中年の男のもので、どことなく下品な印象を受けたとか。それからしばらくして、今度は人面の鹿を見たと言い出した。やはり、あの中年男の顔をしていたそうだ。




その後もその山で、魚、蛇、猿など、何度となく人面の獣を見たらしい。どれも皆、あの男性の下品な顔がついていたという。どうやらこの獣は親族の顔を覚えたようで、最近ではニヤニヤ笑いながら足元へ近よってくるようになった。気味の悪いことこの上なく、目撃したら一目散に逃げるようにしたそうだ。

「そのおっちゃんの顔に、全然見覚えがないんだとさ。どうして自分の山に現れるのか、まったくわからないのが嫌なんだって」

この親族、先日狩猟免許を取得し、山に入る際には銃を携えるようになった。

……その内何か凄い報告が聞けそうで、彼と話す時はドキドキしている私である。