妖怪・怪異・八百万の神々

【めどづの赤子】岩手県某集落で河童の子を産んだ婆さんの話

岩手県某市。河童を「めどつ」と言う。五十年程前(明治26年ごろ)この家に出入りしていた福田の子なさせ婆さんが、一生一度おかしな者を生ませた事がある。

この山の上に住む寅という者の妻がめどつを生んだ。お産の時或る産婆が呼ばれたが、いくらたっても生まれない。何か大切な物を懐中に入れて来るのを忘れて来たとて、その産婆が帰って終ったので、代りに福田の産婆が頼まれた。それでもどうしても生まれない。

それを無理に生ませたらめどつであった。頭の上に袋があり、之をこわしたら水が一升位出た。この水がある間は千人力があって生まれなかったのである。これをこわしたら力が弱くなって生まれた。袋の様なものが顔に下っており、足と手の指は夫々六本、鼻の穴は一つしかなかった。

この女は山から帰ると必ず川に行った。毎日川に行くので或る人が怪しみ、ついて行ったら、だぶんと音がした。それが「めどつ」ではなかろうかと言われている。