妖怪・怪異・八百万の神々

『ヒトガタ』になる寸前のモノを見た話

消防団で年寄りに聞いた話。夜警をしている最中に、妙なモノを見たことがある。少し離れた尾根で蠢いているモノが見えたので、相方と二人して目を凝らした。『それ』は次第に人の貌をとり、やがて立ち上がろうとしているように見えた。

相方の「ぎゃー!」という絶叫の直後、人型はサーッと解けるようにして形を崩した。悲鳴を聞きつけて集まった何人かで現場へ向かったが、木の枝や落葉がこんもりと盛り上がっているばかりだった。