妖怪・怪異・八百万の神々

川上から「襦袢の女」が流れてきた

いつだったか忘れた昔に体験したもの。銀山行にある山清流で、岩魚釣りをした。山深い川なので、他に人もなく釣っていたがふと、川上からなにかが近づいてくる。

それは襦袢を着ただけの若い女だった。女は薄笑いを浮かべ、こちらを見据えたまま直立不動で流れていった。こりゃ忌しいモノを見たなと思い、あわてて竿を収めて引き下がった。良くやっかいになる麓近くの宿女将にそんなモノを見たと話した。灰塩を掛けてくれながら、それあんまし人に話さんほうがいいといわれた。