妖怪・怪異・八百万の神々

上半身だけの女

大学生のころの話です。

私は当時、音楽系のクラブのマネージャーをしていまして、
翌日にコンサートを控え、楽器の積み出しやスケジュールの最終調整などしていて、
終電にやっと間に合うほど遅くなってしまいました。




で、そのがらがらの電車の車内で本を読んでいたら、目の前を何かが通り過ぎ、何だろうなと顔を上げると、パーカーを着た上半身だけの若い女性が、つり革をまるで学校とかにあるウンテイのようにして、その車内を移動しているのを見てしまいました。
一瞬、私はすごい人だなぁと思っていたのですが、その女性は上半身しかないし、そもそもつり革に手が届くわけがありません。
やばいものがいる!と思ったのですが、終電なので途中下車するわけにもいかず、びびっているしかありませんでした。
その上半身女はむちゃくちゃ楽しいのか、つり革を伝って私のいる車両を何度も往復もしていました。
私が見回すと、乗客の何人かはその女性の存在に気づいているようで、
40か50ぐらいのスーツを着たおじさんが、見上げて顔をしかめていました。

私は最寄り駅に着いたのでさっさと降りましたが、あの後どうなったのか、今でもふっと思い返すときがあります。