妖怪・怪異・八百万の神々

時空の歪む山

免許取り立ての頃。

昼頃、友達4人とランエボフル乗りで山の奥深くまで走ってたら、下手くそだったんで横道に突っこんだ。
5人で車を押し上げて一服してたら、笹藪が大きく鳴りはじめ、
熊かと思い焦ったが、どっかのおばあちゃんだった。

おばあちゃん曰く、山菜取りしてたらしい。
早朝から採っていて、もう疲れたし送って欲しいと言うので、
ランエボに6人乗りで「せめー」とかゲラゲラ笑いながら、ばあちゃんの家まで送ってあげた。
因みにばあちゃんは、助手席に移った俺の膝の上で「今日はつかれたわー」などと言っていた。

一時間ほど車で走りばあちゃんの家に行くと、何十台も車が止まっていてパトカーもいた。
ばあちゃんは何事かと顔が青ざめるし、警察もいるから俺達もヤバイと思い、
ばあちゃん降ろしてそのまま逃げた。

するとその日の晩、家に警察がやってきた。
俺は6人乗りがばれたと思い凹んでいたら、警官が、
「あのお婆ちゃんどこで拾ったの?5日も行方不明だったんだよ。婆ちゃんは、朝出掛けただけで昼には帰ってきたって言い張るし、君たちなんか知らない?」
とか言いだした。

俺は警官に、「知らないっすよ、呆けてるんでしょ」と言って、
事が冷めるのを待って、婆ちゃんに話を聞きにいった。
婆さん曰く、山菜取りは朝から出かけて、昼には俺たちに会った。
皆ボケ扱いするとぷりぷり怒っていたが、

「話が本当なら、婆ちゃんは人より4日は老けてないんだよ」と説明すると、ちょっと機嫌か良くなった。

俺達こいつは面白いと思って、その山でキャンプすることにした。
テントやらランタンを買って、二泊ほど山で過ごしたけど、特になにもなく昼には山を降りた。

俺が風呂入っていると、友人から電話がかかってきて、
『日にちがどうもおかしい。新聞TV確認してみろ』と言う。
因みに、婆さん拾ったのが8月1日で、話聞きにいったのが2日。
3と4キャンプして、その日は5日のはずなのに、新聞をみるにどうも1日らしい。

皆で集まって情報整理しても、どうも1日らしい。
怖くなって、婆ちゃんの家に行ってみると、大量の車とパトカーが停まっていて、
話を聞いてみると、山菜取りに行って見つかっていないらしい。
デジャヴかとも思ったが、友人の一人が「巻き戻ったんじゃね?」と言い、
警官に日にちを聞くと、やっぱり1日らしい。

友達が「どこどこの山にいるんじゃないですか」と、余計な一言を言ってしまった。
警官に「何でそう思うの」と聞かれ、「カンです」と答えその場から逃げた。

とりあえず、ばあちゃんをレスキューしにいこうとその山に向かったが、
結局見つからず途方にくれていると、ポッケからランタンとテントのレシートが出てきた。
日付けは2日。この日は1日。

俺たちは購入した店に行き、店員にレシートをみせ問い合わせてみると、
「不思議ですねえ、これどうしたんですか?」と聞かれ、
「未来から来ました。このテントとランタン売れてたりします?」と聞いてみると、
「今日入荷で明日店頭に並ぶんですよ」と言うので、商品を確認させてもらった。
テントはよくわからんかったが、ランタンはまったく同じ製造番号の物を確認できた。
店員が「ホントに未来から来たんですか」って大げさに驚くので、
「ハイ ソウデス ワレワレハ ミライジンダ」と言ってごまかして逃げた。
たぶん、変な奴程度にしか思われてないはず。

んでもって、混乱したまま友人たちと酒を飲んで、
「俺たち人より何日間か老けたんじゃね」とか言いながら笑っていたら、夜中に警察から連絡が入った。
友達が携帯番号聞かれていたらしい。
警察曰く、君たちの言っていた場所でね、おばあちゃんが遺体で見つかったよYO。

その後は事情聴取受けたり大変だった。
車で跳ねたんだろとも疑われたりしたけど、結局死因は凍死だった。
夏山なのに凍死も不思議だったけど。
俺たちに起こったことを警察に話すと、
不思議だよね、けど面倒だからどうでもいいや、などほざかれた。