妖怪・怪異・八百万の神々

樹海で出会ったスーツのヒト

今から数年前の話ですが、30代の男女5人(男性3人、女性2人)で、7月に青樹ヶ原樹海に入ってみようかと、1人の男性(Aさん)が話をしたそうです。他の4人は当然「やめよう!怖いから」と言いました。しかしAさんは、「そんなに怖くないさ、目印を付けていればいいし、奥に入らなければいいんだから」と言いました。

数日後、男女5人は青樹ヶ原樹海に行ったのです。この日は晴天で明るく、そんなに怖さを感じなかったそうです。5人は夏ということもあり軽装で樹海に入って行きました。しかし樹海の中は寒く震えるくらいでした。

5人は、目印(木にヒモを付けてる)を付けながら樹海の中に入って行きました。だんだん樹海の中に入ってゆくと、目印のヒモも足りなくなり、みんなは帰ろうと言いだしました。そして今来た道を戻って行きましたが、目印のヒモが見当たらないのです。みんなは怖くなってきました。そして樹海の中は薄暗くなりはじめ、寒さも厳しくなりました。

そうです。5人は迷ってしまったのです。女性2人は泣き始め、男性達も不安になりました。男女5人は寒いので身体を寄せ合いながら座っていた時、Aさんが、こんなことになると思っていなかった。でもこの暗いところを歩くと危険だから、今日はここで野宿をして明日になったらまた帰ろうと言ったのです。

そのとき、暗闇の中からグレーのスーツを着た50代の男性1人が現れ、5人に「どうしました?道に迷ったのですか?」と聞いてきたのです。5人は口をそろえて「はい!そうです。困っています」と言うと、その50代の男性が「私についてきなさい」と言いながら歩いて行きました。

みんなは、その男性の後を付いて行きました。すると、目の前に灯りが見えて来たのです。そうです道に出たのです。みんなは喜んでいました。そして道案内をしてくれた男性にお礼を言おうとしましたが、男性の姿はなかったのです。そうです。この道案内をしてくれた男性は、樹海の中で自殺した人だったのです。