妖怪・怪異・八百万の神々

「そんなはず…死体の上半身はどこに…」

これは忘れもしない7年前、自分が小学校6年生の頃の体験です。
当時住んでいた所からバスで少し行ったあたりに、なかなか開かないと有名な踏切がありました。そこには歩道橋も無く、待ち兼ねた通行人の踏切横断による事故が多発するということでも有名でした。

ある日、風で帽子が飛んでしまい、踏切の中に取りに行った少女が電車に跳ねられるという事件がニュースで報道されました。「このテレビに映ってる踏切、近くのじゃない?」と親に知らされ、自分はやじ馬精神から夜中に自転車で事故現場に向かうことにしました。

蒸し暑い夏の夜。なぜかこの日だけは背筋が凍るほど寒い、寒い夜でした。壊れた外灯、人気のない街を、恐る恐る進み事故現場に到着。そこには警官が数名集まって、何やら話し合いをしていました。聞き耳を立てると「…そんなはず……死体の上半身はどこに…」という話。一気に怖くなった自分は急いで今来た暗い道を引き返そうとしました。

振り返った瞬間、足を無くした少女が苦しそうにしながら必死にもがいて…もがいてこちらに近付いてきているのです…「ボゥシ……ァタシノ…ボゥ…シ…」夏の夜の話です。