妖怪・怪異・八百万の神々

墓場で聞いた懐かしい声

彼女はふと目覚め2、3ヵ月前の事を思い出した。「あの時も今日みたいな雨の日だったっけ。」ため息を交じらせ一人言を発した。その日は休日だったため寝直すことにした。基本的に彼女はあの出来事以来雨の日は出歩かないようにしていたのだ。

1、2時間ぐらい眠っていたのだろうか、ふと目が覚めた。カーテンを開けると雨は止んでいた。彼女は「最近行ってなかったっけ。最近は仕事が忙しかったし・・・たまには行ってやるかぁ」とあまり乗り気ではなかったがある場所に向かった。

2、3ヵ月前、会社の飲み会に行った帰りのことだった。同僚Sが泥酔していたため、女は家に泊めてやることにした。Sはコンビニに行ってくると言いだしたが彼女は引き止めた。酔いが覚めていないこともあったが、妙な胸騒ぎがあったからだ。

彼女は「私が行ってくる??それとも一緒にいこうか??」とSに言ったのだが、Sは「私もぉ子供じゃないんだからぁ心配しないでよぉすぐ近くだしぃ」と言って出ていってしまった。外は少し湿気混じりで今にも降り出しそうだった。

・・・・・Sは帰ってこなかった。雨が降り視界が悪くなった交差点で轢かれてしまったのだ。即死だったそうだ。そんな事を思い出しながらSの眠る墓園に行き、墓の前に座り込んで花を供えた。

「S来たよ。この頃来られなくてゴメンね。私はSがいなくなってからも元気でやってるから心配しないでね。安らかにお眠りください。」と合掌し唱えた。するとポツポツと雨が降り出してきた。どこからともなく声がする
「雨降ってきたけど気を付けてね。私みたいにならないように」
それは紛れもないSの声だった・・・