妖怪・怪異・八百万の神々

個室の「目」

十年位前のことです。




当時中学生だった私は運動部に所属しており、毎日夜七時すぎまでバレーボールにはげんでいました。ある金曜日、明日は休みということで練習が終わるのがいつも以上に遅くなり、帰る支度をしてふと時計を見ると8時を回っていました。体育館は後者とは離れた所にあり、体育館に覆いかぶさるように窓から見える木々は真っ暗ということも有り独特の不気味さをかもし出していました。

顧問の先生は用事があるということで、練習が終わってすぐ職員室に帰ってしまい、生徒もみんな我先にと帰る準備を済ませ帰っていきます。方向が一緒の親友S、Kと一緒に帰る準備を済ませ玄関に来たころには、私たちだけしか残っていませんでした。そして、いざ帰ろうとした瞬間、Kがトイレに行きたいと言ってきました。トイレは校舎と体育館をつなぐ渡り廊下の先にあります。ちょっと待っててとKは言い残し、廊下の奥に消えていきました。

おい遅くないか?とSが私に言いました。確かに、kがトイレに向かってから、すでに10分以上がたっていました。大きいほうでもしてるんじゃないかと談笑して時間をつぶしていましたが、Kは一向に帰ってきません。そこで私とSはKを脅かしてやろうと思い、薄暗い渡り廊下を渡ってトイレにやってきました。電気がついていて、どうやらKはまだなかにいるようでした。

入ると、やはり一番奥の個室がしまっていました。そこでSが、個室のドアをドンドンたたきました。「おいやめろよ」という反応を期待していたのもつかの間、全然反応がありません。Sは「いい加減でてこないと覗くぞ」とからかいましたが、一向に反応がないどころか物音ひとつしません。

意を決してsが下からのぞくと、kが「ぎええええええええええええあああああああ」という奇声を発しながら個室から飛び出し、一目散に逃げていきました。何事かと思い覗いてみると、あきらかに人間とは思えない何かの目が壁からこちらをにらんでいました。私とsは職員室にかけこみ、先生に一部始終を告げました。その後先生と一緒に現場に戻ってみると、相変わらず個室のドアは閉まっていました。先生が上からのぞくと中には誰もいませんでした。そしてKは今でも行方不明です。個室にかばんを残したまま…