妖怪・怪異・八百万の神々

子供の頃、お揚げのおつかいにマッチ箱を持たされていた

20年ほど前、まだ小さかった俺が買い物に行くときに、婆ちゃんが「おあげさんを買ってくるんだからマッチを持っていきなさい」と小さなマッチ箱を持たせてくれたことがあった。
なぜマッチ箱なんか渡すのかと不思議に思い、婆ちゃんに聞いてみた。

婆ちゃんが若い頃、俺と同じようにおあげさんを買いに行かされた時、帰り道でキツネとトンビが屋根の上からじーーーっと見つめていたそうな。なんだか不気味になって早足で帰ろうとするのだが、キツネとトンビが後からしつこくついてきたそうだ。あまりに怖いので山小屋(炭小屋?)に隠れてしばらくやりすごし、ほっとして外に出たら山小屋の屋根の上から「おあげ置いてけ!」という声が聞こえてきて、そのまま気を失った。

目がさめると家の布団で寝かされていて、母親(ひい婆さん)が心配そうに「マッチを渡し忘れてた・・・」と言ってたそうだ。当然おあげさんは跡形もなく消えていたそうだ。

天国にいる婆ちゃんへ、今の世の中はキツネやトンビより怖い人間がいるよ。マッチどころかスタンガンがいる嫌な世の中になっちまった・・・