妖怪・怪異・八百万の神々

地元の峠道に『どうしても切れない木』がある

知り合いの話。地元の峠道を整備しようとした際、どうしても切れなかった木があったという。切ろうとした作業員が怪我をしたり、工具や機械が突然動かなくなったりして、結局皆が近よるのを嫌がるようになり、放っておかれることになったのだと。他は真っ直ぐに敷き直された道が、そこだけ木を回り込むように変なカーブを描いているのは、そういった理由かららしい。

知り合いはその工事現場へ資材を運びに行った折りに、その木を見たそうだ。
「そしたらな、ぼんやりやけど見えたんや。 木の上にでっかい猿みたいな、だけど透き通った何かがおった」

慌てて見えない風を装い、資材を手早く下ろして現場を後にする。
「あんなモンが居てはるんじゃ、あの木はちょっと切れないやろうなぁ」
帰りの運転中、しみじみとそう思ったそうだ。