妖怪・怪異・八百万の神々

山頂の木の上で扇子のようなものを振り、雲を操っていた何かの正体

友人の話。彼の所属する青年部では、毎年、初日の出登山というものを開催している。元旦の前には、山頂の小さな祠に、当日晴天に恵まれるようお参りするのだそうだ。

一度、雲が多く天気が悪い年があった。どうなることかとスタッフ一同心配していた。日の出時間間近、彼は山頂の一番高い木に、何かが止まっているのに気がついた。はっきりと見えなかったが、何だか山伏のようだったという。それは分厚い雲に向かい、一生懸命に団扇のようなものを振っていた。なぜか分からないが、彼も心の中で必死に応援したそうだ。

日の出寸前、雲の一部がぽっかりと口を開けた。皆の口から歓声が上がり、無事にご来光を拝むことができた。雲が切れたのは、ちょうど日の出の前後、十分くらいだけだったという。いつの間にか木上の影は見えなくなっていた。彼はそれ以来、年末のお参りには欠かさず参加しているそうだ。今のところ、六年間無事にご来光を拝めているらしい。