妖怪・怪異・八百万の神々

雪山の測量中に感じた気配

測量士から聞いた話。その測量士は声が大きいことで有名だった。そんな彼が雪山で測量をしていた時の話。

ポールを持って立っていると、背後の樹上でガサガサと音がする。見上げても何も見えない。が、彼が移動するとまた背後の木から音がする。そんなことを繰り返しながらも測量は進んだ。長めの距離を測りはじめた時、死角に入った彼に対して相方が呼びかけた。とっさに自慢の大声で返事をする。
「おぉ――――いッ!」
ドサッ 
背後で何かが落ちる音がした。慌てて振り返ったが何もいない。ただ、雪面に人型の跡だけが残されていた。